家族信託・民事信託とは

 信託とは、目的を設定して自ら(委託者)の財産を信託財産として自己の財産から分離し、委託を受けた受託者が管理運用して、その利益を受益者(委託者や第三者)が受ける契約です。

 信託銀行が代表的な例ですが、現在は信託法が改正されて民間でも民事信託として利用できます。この民事信託を利用して、家族間で後見的な利用を目的とした財産管理を行うことができます(家族信託)。また遺言の代用として相続人以外の近親者に財産使用させることも可能です。

家族信託の特徴/後見制度との比較

 信託は財産を委託して管理運用する契約である為、契約時において当事者には意思/判断能力が必要です。信託財産の管理運用や処分の方法、受益者の順序指定など自由に設計できます。 

◆メリット 

 1.信託に関する内容(財産・管理運用・受益者など)を自分で設計できる。

 2.財産管理を裁判所の関与なしに家族間で行える為、状況変化に応じて柔軟に対応できる。

◆デメリット

 1.複雑な信託内容にする程、人/法律/税金の各関係のリスクコントロールが難しくなる。

   対策 家族間(一世代)で信託が完結するようなシンプルな内容にする。

 2.監督機能(家庭裁判所の関与)がない為、管理運用する受託者を慎重に選ぶ必要がある。

   対策 信頼できる家族や第三者を信託監督人として置き、受託者を監督してもらう。

◆信託監督人について
  信託監督人は受益者の為に受託者を監督する目的で任意に設置できます。第三者(専門職)を信託監督人にすることが望ましいですが費用が必要になります。家族信託であれば、費用を抑える為に受託者以外の家族を信託監督人として置き、信託事務を監督してもらって家族全体で信託運用することで、不正や相続紛争の予防として機能させることが可能です。

◆後見制度との比較

種 類 重要財産処分 管理方針 管理人指定 監督人 後見人等の報酬
法定後見
(成年後見)
家裁許可必要 現状維持 家裁指定 家裁判断 親族なら任意、弁護士・司法書士等なら必須
任意後見 契約において自由に設計可能 必須 監督人は必須
家族信託 任意 任意

※家族信託と任意後見は似ていますが、監督機能(監督人の有無と報酬)に違いがあります。

◆種類選択のポイント

 管理すべき財産が一般的な自宅不動産と預貯金だけの場合、監督人に継続的に支払わなければならない報酬は大きな負担である為、家族関係に問題がないなら家族信託が費用の面では有利と考えます。第三者の監督の必要性が高いなら任意後見になります。

 家族間に問題がなく、財産の管理方針が現状維持だけなら、家族候補者が後見人に選任される可能性が高いので法定後見も選択肢に入ると考えます。

  成年後見と任意後見はこちら

予防法務としての家族信託の利用

◆意思/判断能力が衰えた人の財産を保全する為の家族信託の利用

 家族信託の利用で、委託者の意思/判断能力が衰えても受託者による安定した管理が可能になり、資産の不明瞭な散逸を防ぐ等の予防法務になります。信託には家庭裁判所の監督はありませんが、管理人(受託者)以外の家族などが信託監督人になって信託事務を監督してもらうことで財産管理の安全性を高めることは可能です。

◆遺産分割における相続人間の紛争を防止する為の家族信託の利用

 信託監督人を付けた家族信託の利用により、財産の管理状況が受託者の信託事務と信託監督人の監督事務を通じて明確になります。また信託契約時に定める信託終了後の残余財産の帰属先を具体的に指定することで、相続人間での争いを防止する効果も見込めます。

家族信託プラン(後見目的の財産管理)の例/手続の流れ

 予め、意思/判断能力が衰えて財産管理できなくなる事態に備えた信託契約をしておくことで、家族(受託者)に財産(全部または一部)を管理運用してもらい、その受益を自分や家族が享受することができます。 状況に応じて財産処分の権限を受託者に与えておくこともできます。受益者の死亡を信託終了事由に設定しておけば、受益者の死亡により相続手続に移行するので、相続や税金に関する事もシンプルになります。
◆預貯金の信託(委託者:父、受託者:子、受益者:父または母、を想定)
 預貯金を信託財産とし、子が受託者として預貯金を管理して、定期的に生活費の交付を受けたり、様々な支払い等を行ってもらいます。また預貯金の不明瞭な散逸を防ぐことにも寄与できます。
◆自宅不動産の信託(委託者:父、受託者:子、受益者:父または母、を想定)
 自宅不動産を信託財産とし、子が受託者として自宅を管理をして必要なメンテナンス等を行い、生活基盤の維持と居住場所を安定させます。仮に親が介護施設等に入所して自宅が不要になった時は、売却して代金を生活費として管理してもらうことも可能です。

この方法は、認知症など意思能力低下によって自宅の売却(契約)が困難になる事態を避ける為に有用です。成年後見でも売却は可能ですが、生活費が枯渇するなど客観的な必要性が認められず家庭裁判所の許可を得られない、売却手続そのものが複雑になる、許可手続に時間を要して売却タイミングを逸する、等のデメリットがあります。

◆手続の流れ

 1.制度、信託内容の検討、書類の準備など。

          
 2.信託契約の内容の決定。 当事務所が支援。
         ↓ 

 3.公証役場との調整。 当事務所が調整。

          

 4.公証役場に出向いて信託契約を公正証書で作成(信託成立)。当事務所が付添い。
         ↓ 

 5.財産分別(信託財産の登記(不動産)・登録(預貯金など他の財産))の手続。

           不動産(信託登記)は当事務所が代理申請、他の財産については支援。

他の民事信託の紹介(遺言(代用)信託・事業資産信託)

◆遺言(代用)信託

  遺言を利用する信託です。遺言書において、遺産を信託財産として管理運用方法と受託者・受益者および信託終了後の帰属先などを定めます。

 例えば相続権がない親族や内縁の妻などを受益者に指定して、遺産である預貯金や自宅不動産の使用利益(受益権)を与える等の利用が考えられます。そして受益者の死亡(信託終了)後の帰属先を相続人とすることで元の相続に戻します。この方法は、相続権のない人にも疑似的に相続させることを可能にします。

◆事業資産の信託

 経営者が個人名義の資産(例えば土地など)を事業用に提供している場合、死後、その事業資産は相続財産になり遺産分割の対象になります。事業資産を遺産分割の対象から外す為に信託を利用することが考えられます。信託目的を事業用途、事業資産を信託財産、受託者を後継者として管理運用する信託契約によって、事業資産を安定的に利用することが可能になります。

信託財産の分別管理(不動産の信託登記/口座名義変更/登録など)

 信託財産は、契約後、委託者の財産から分離されて受託者の管理下に置かれますが、受託者自身の財産と混在しないように、信託財産である旨を明示して分別管理します。

 不動産は信託登記(詳しくは下記参照)をし、預貯金は信託口座であることを示す名義変更等を行います。その他の財産は登録できるものは登録し、登記・登録できないものは明認方法を施す等して分別します。

不動産の信託登記

 不動産を信託財産として信託契約を行った場合、受託者に対する所有権移転登記(不動産の名義変更)と信託登記を、登記所(法務局)に対して申請する必要があります。信託登記には信託目録(信託契約の内容)を作成して添付する必要があります。また信託内容に変更があった時、信託が終了した時、信託財産を処分した時など、その旨の登記が必要です。

 信託に関する登記の前提として信託契約を締結する必要があります。当事務所では信託設計の支援を行っています。また依頼者にて既に信託契約を締結された場合における信託に関する登記だけの依頼も受けています。

事務内容と費用(手数料)の補足

◆事務内容の補足
 1.信託内容の設計サポート、公正証書作成のサポート、不動産の信託登記。
 2.信託監督人事務および信託監督人の支援事務。
 3.契約後の信託事務の相談、支援など。

 4.不動産の信託登記だけの依頼も対応できます。※前提として信託契約が必要です。

 5.相談・見積り・依頼はこちらから

◆費用(手数料)の補足
 1.信託設計支援の手数料は、金200,000円または信託財産額×1% のどちらか大きい額です。

    手数料一覧(料金表)はこちら
 2.費用の計算例(料金表で計算した場合)

   ・自宅を保全する後見的な目的で財産管理を行う家族信託契約をする。

   ・自宅(土地・建物×各1筆、名義人は委託者のみ、評価額1,000万円)。

   ・受託者は子、受益者は名義人(委託者とその配偶者)とし、自宅を信託財産とする。

   ●信託設計の手数料は(信託財産の評価額1,000万円×1%=10万円)、20万円。

事務内容 手数料 実費 登録免許税 備 考
信託設計の支援 200,000円 0円 コンサルティング。
公正証書作成支援 30,000円 契約書を公正証書にする。
不動産の信託登記 75,000円 0円 30,000円 評価額×1000分の3(軽減税率)
事前の登記事項調査 200円 800円 不動産×2筆
交通費・郵送費 3,000円 3,000円 基本定額
筆数加算 2,000円 0円 不動産×2筆
登記事項証明書 600円 1,200円 不動産×2筆
小計 310,800円 5,000円  30,000円  

                       費用総額=345,800円+(消費税は除く)

   公正証書の実費は、公証役場手数料により信託財産額に応じて算出されます。

 


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