成年後見制度について

 認知症などにより意思/判断能力が衰えてしまった場合に、家庭裁判所が選任する成年後見人等により財産管理や身上保護を支援してもらう制度です。大きく分けて法定後見・任意後見があります。任意後見は意思/判断能力が衰える前に、予め財産の管理内容等を自分で定めて契約して衰えた時に備えるものです。また後見制度の代替として家族信託の利用も考えられます。後見制度や家族信託の事務範囲外を補うものとして死後事務や見守り事務があります。

  制度概要 [法務省HP]家族信託はこちら

◆利用を要する場面

 1.預貯金など財産を自分で管理することが難しくなったとき

 2.遺産分割協議の当事者(相続人)になったとき

 3.住宅ローンの借入れ又は借換えの際の担保提供者になるとき

 4.介護施設に入所する為の契約をするとき

 5.生活費等が必要になり自宅不動産を売却するとき

 6.様々な法律行為(契約の締結など)を行う必要があるとき

 7.その他、法律上、生活上、保護すべき必要性があるとき

◆法定(成年)後見と任意後見、家族信託の比較

種 類 重要財産処分 管理方針 後見人指定 監督人 後見人等の報酬
法定後見
(成年後見)
家裁許可必要 保存行為のみ 家裁が指定 家裁判断※1 親族なら任意、弁護士・司法書士等なら必須
任意後見 契約において自由に設計可能 必須 監督人は必須
家族信託 任意 任意

※多額の資産がある場合、信託銀行等が扱う後見専用の信託(又は預金)の利用により、監督人が選任されない運用ですが、家庭裁判所が必要と判断すれば監督人が選任されます。

◆種類選択のポイント

 管理すべき財産が、自宅不動産と多額でない預貯金だけの場合、法定後見と任意後見は第三者による後見人(又は監督人)に対する報酬が継続的に発生する為、金銭負担が大きくなります。よって家族関係に問題がなければ家族信託が費用の面では有利と考えます。ただし、家族関係に問題がなく財産の管理方針が現状維持であるならば家族候補が後見人に選任される可能性が高いので法定後見も選択肢に入ると考えます。家族が後見人になった場合、報酬を請求するか否かは後見人の判断によります。

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予防法務としての成年後見制度の利用

◆意思/判断能力が衰えた人の財産を保全する為の成年後見制度の利用

 成年後見制度を利用することにより財産管理の制限を受けますが、家庭裁判所の監督下での後見人による財産管理で資産の散逸を防ぐことができ、余計な法律トラブルを回避できる等、予防法務としてのメリットがあります。なお任意後見であれば財産管理の方法や後見人を自分で決めることが可能です。

◆遺産分割における相続人間の紛争を防止する為の成年後見制度の利用

 成年後見制度を利用することにより、財産管理の状況が後見事務を通して後見終了まで明確になります。財産が明確であれば遺産分割時に遺産を調査する必要がなく、紛争要素が減って遺産分割の方法を協議するだけで済みます。

法定後見制度(成年後見・保佐・補助)/手続の流れ

 法定後見制度は、既に意思/判断能力が衰えている場合に利用できる制度です。家庭裁判所に成年後見等の申立書を提出し、審判により成年後見等が開始されます。本人の意思能力・判断能力に応じて家庭裁判所が次の3種類から決定します。

 家庭裁判所によって選任された成年後見人等は家庭裁判所の監督の下、権限に応じた事務を行います。本人の家族関係や財産状況によって監督人が別途選任される場合があります。

種 類 意思/判断の能力 成年後見人等の財産管理に関する権限
成年後見 欠いている ほぼ全面的な代理権
保佐 著しく不十分 民法規定の重要な法律行為の同意権
補助 不十分 保佐の同意権事項の一部

 

◆手続の流れ(申立書提出から審判までに要する期間は、概ね1カ月半です。)
 1.相談、本人の状況や財産の確認、制度利用に関する説明など。

              ↓
 2.医師の診断書・他の親族の同意書(任意)の取得、

   成年後見人等の候補者(推薦者)選定、予納金(医師の鑑定料など)準備。

              ↓

 3.書類準備(申立書・財産目録等の作成、戸籍謄本の取寄せ)。 当事務所が作成・手配。
              ↓

 4.申立の準備完了、家庭裁判所への面接予約。 当事務所が段取り。
              ↓
 5.家庭裁判所に申立(書類提出)/家庭裁判所での面接付添い(任意)。
              ↓
 6.成年後見等の審判(成年後見人等の選任と登記)と開始。
              ↓
 7.成年後見人等による財産調査および就任時の事務報告書を家庭裁判所に提出。

任意後見契約(自分で設計できる後見事務)

 意思/判断能力が衰える前に、衰えた時に備えて自らが選んだ後見人と契約し、現実に衰えた時に後見事務を行ってもらう制度です。後見人や後見事務の内容を自分で決めることができるのが法定後見との違いです。任意後見契約は公正証書でする必要があります。後見事務の開始にあたっては家庭裁判所が選任した後見監督人(弁護士や司法書士など第三者)が付くことになりますので、全てを自分で定めることはできません。

◆主な特徴  

 1.自分で選んだ人と契約することで後見人を選定できる。

 2.後見事務の内容(財産の管理や処分など)を任意に定めることができる。

   ※契約書で具体的に定めておくことで後見人が権限を行使します。

 3.家庭裁判所による監督人の選任は必須で、指定もできない。

 4.能力が低下する前に、予め公正証書で契約しておく必要がある。

 5.能力が低下するまでは、後見が開始されず制限なく生活できる。

◆任意後見契約までの流れ

 1.相談、本人の状況や財産の確認、制度に関する説明など。

              ↓
 2.任意後見人の候補者、後見事務の内容など詳細な検討。

              ↓

 3.任意後見契約の内容決定、公証役場との調整。 当事務所が支援・調整。
              ↓

 4.公証役場で公正証書を作成と登記、任意後見契約の完了。 当事務所が付添い。
◆任意後見開始の流れ
 1.判断能力の低下により、家庭裁判所に監督人選任の申立て。
              ↓
 2.任意後見監督人の選任審判により任意後見の開始。
              ↓
 3.任意後見契約に基づいた後見事務、定期的に監督人に報告。

後見人の事務内容・期間・権限範囲

◆財産管理と事務報告書(定期)の提出

 後見事務は、出納帳や預貯金の管理、各種の金銭の支払いと受領、介護施設などの契約に関すること、本人の身上保護などです。1年に1回、家庭裁判所に対して定期的に事務報告書を提出する必要があります。

 任意後見の場合、契約書で予め定めた方針により財産管理を行うことになります。但し任意後見監督人への事務報告は必要です。

◆重要財産の処分にあたり家庭裁判所の許可を要する

 生活資金が枯渇することにより自宅を売却する等、重要財産の処分をする必要が生じた場合、事前に家庭裁判所に対して許可を求めなければいけません。

 任意後見の場合、契約書に定めがあれば、許可がなくても処分可能です。

◆後見の期間

 後見事務は、後見開始の審判から本人が死亡するまで、または回復して後見の必要がなくなるまで続きます。本人が死亡した時は後見が終了して相続手続に移行します。

◆権限などの範囲

 後見の種類(成年後見・保佐・補助)により財産管理や身上保護を行うべき範囲は異なります。成年後見は、本人が意思能力を欠いている為、財産管理と身上保護について ほぼ全面的な代理権が成年後見人に付与されます。保佐や補助は、本人の権利を制限し過ぎないようにする為、法律と審判内容に基づいた部分的な同意権や代理権が保佐人や補助人に付与されます。

 任意後見の場合、契約書で定めた範囲内の権限になります。

任意後見制度を補完する手続と事務(遺言・死後事務・見守り事務)

 任意後見は、契約してから任意後見開始までの間、および後見終了後については契約の範囲外になり後見人の権限を行使することができません。この範囲外の部分を補完する為の手続や事務は次のとおりです。

 1.死後の遺産承継方法を指定する場合 遺言書の作成

 2.遺産承継以外の事務(葬儀など)を指定する場合 死後事務

 3.契約から後見開始まで一人暮らしで見守り等が必要な場合 見守り契約

事務内容と費用(手数料)の補足

◆事務内容の補足

 1.手続の選択・利用は、後見制度の主旨に則り、「本人の利益」を優先しての相談対応になります。

 2.契約を要する任意後見の利用には、本人の意思/判断能力が必要です。

 3.相談・依頼はこちらから

◆費用(手数料)の補足

 1.手数料一覧表(料金表)はこちら

 2.上記1が原則ですが、事務の煩雑さに応じて説明の上、増額させて頂く場合があります。





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