不動産の相続と登記(不動産の名義変更)

  相続とは人の死亡を原因として、その人に属した財産(権利義務)が相続人に承継されることです。不動産を相続したときは、相続登記(不動産の名義変更)の申請を登記所(法務局)に対して行う必要があります。遺言書がある時は遺言書による相続登記を、遺言書がない時は遺産分割(協議書)による相続登記を行います。

 相続登記の手続は、遺産(相続財産)の確認、相続人調査(戸籍謄本等の取寄せ)、遺言書や遺産分割協議書など各種書類の手配と作成、他にも相続状況に応じて別途手続や対応が必要になります。

相続登記が必要である理由

◆相続登記をしてないと、売却などの処分ができない
 売買などの取引では登記(不動産の名義変更)が必須です。その前提として相続登記が完了している必要があります。また金融機関で借入れを行う際の担保提供(抵当権設定登記)の場合など、不動産の権利変動に関する手続すべてに同じことが言えます。

◆相続登記は省略できない

 数世代に渡って相続登記を放置していた場合、現在の相続人から死亡した登記名義人まで遡って相続人調査をし、全ての相続人の同意(遺産分割協議書への押印)を得る必要があります。そして世代ごと順番に相続登記を行う必要があります。当然、放置していた分の費用が発生し、次に挙げるリスクの可能性も高まります。

◆相続関係が複雑になり手続が困難になる
 現在の相続人から死亡した登記名義人まで遡って相続人調査をし、全ての相続人の同意(遺産分割協議書への押印)を得る必要がある為、時間経過に伴って、相続人の世代交代(増加)、音信不通、高齢による意思能力の低下など、問題が発生する可能性が高まります。その結果、相続手続を進める為に別の手続が必要になり、通常の相続手続に比べて倍以上の手続期間と費用を要することになります。

相続登記の義務化について

 相続登記は義務化される予定です。詳しくは情報が明らかになり次第、紹介いたします。

相続登記(不動産の名義変更)手続の流れ

1.死亡(相続開始)、役所への死亡届等の提出の上、相談。

      

2.遺言書の有無の確認  あり  遺言書による相続登記へ

                     

      なし

      

3.遺産確認および相続人調査(戸籍謄本等の取寄せ)。 当事務所が調査。

  ※被相続人の出生時の古い戸籍〜死亡時の戸籍まで全部と相続人全員の戸籍謄本が必要です。

      

4.必要書類の作成(遺産分割協議書ほか書類作成)。 当事務所が作成。

      

5.遺産分割協議、合意後に遺産分割協議書に署名押印(実印)。

      

6.相続登記(不動産の名義変更)の申請。 当事務所が代理申請。

      

7.登記完了、権利証(登記識別情報通知)ほか一式のお渡し。

相続人の範囲と順位

相続人の範囲図
故人(被相続人)から見て、相続人は次のとおりです。配偶者は常に相続人です。
 第1順位  配偶者と子(A・B)、配偶者がない時は子(A・B)のみ。
 第2順位  子(A・B)がない場合、配偶者と父母、または父母のみ。
 第3順位  子(A・B)と父母がない場合、配偶者と妹、または妹のみ。
※孫は、子が故人(被相続人)より先に死亡していた場合、子に代わり相続人になります(代襲相続)。

◆夫婦間に子がない場合のポイント

 配偶者は常に相続人となる為、子がない場合、被相続人の父母や兄妹が共同相続人となり、遺産分割協議が必要になります。この場合、被相続人の父母や兄妹との関係が疎遠だと協議が紛糾する可能性があります。予め遺言書を作成しておくと、遺産分割協議を省略できる為、相続手続がスムーズに進みます。

  遺言書の作成はこちら

遺産分割協議と遺言書、法定相続

  相続手続では、遺言が遺産分割協議に優先するので、まず遺言書の有無を確認します。遺言書がある時は、遺言内容に従って執行します。遺言書がない時、または遺言書に記載されていない遺産承継については、遺産分割協議の合意により執行します。

  遺産分割協議は、相続人の話合いで全員が合意する必要があり、同意しない相続人が一人でもいると合意できず成立しません。当事者で話し合っても合意できない場合は、相続人各自で代理人(弁護士)を入れて話し合いを継続する、または家庭裁判所の調停を利用することになります。調停も成立しない時は裁判を検討することになります。

 また相続人の個別事情(未成年・意思能力不十分・行方不明など)がある場合は、特別代理人や成年後見人などの法定代理人により協議を行うことになります。なお外国居住の相続人は協議に参加する必要があります。

  遺産分割協議書には相続人全員の押印(実印)と印鑑証明書が必要です。

  遺言書がなく、遺産分割協議もしない場合、個々の遺産を法定相続分で共有することになります。

遺産分割の方法

◆通常分割
 個々の遺産について承継する相続人を定め、合意する方法です。いわゆる遺産分けです。遺産一つ一つの法定相続分による共有状態を解消するのが目的です。

◆代償分割

 特定の遺産(例えば不動産)を特定の相続人が単独で相続する代わりに、不利益を受ける他の相続人に対して代償金を支払う合意をする方法です。通常分割と組合せて利用されることが多いです。

◆換価分割

 遺産を売却して、その売却代金(金銭)を分割対象として合意する方法です。主な遺産が不動産しかなく分割困難なとき、または自宅を誰も承継せず空き家になる為に処分したいとき等の場合で利用されます。

 なお相続不動産を売却する場合、前提として相続登記を行う必要があります。

配偶者の居住権と登記

◆配偶者の居住権
 法律改正以後、故人(被相続人)の所有する建物に居住していた配偶者(共有を除く)は配偶者居住権を取得できます。短期(半年または権利の帰属が確定する日まで)の居住権は何ら合意等を要せず取得できます。短期を超える居住権は遺産分割協議等で所有権の相続とは別に合意する必要があります。この居住権の存続期間は配偶者の死亡まで、または協議で定めた存続期間の満了までです。

 この方法で、所有権から居住権を分離し、子と配偶者の権利保全が可能になります。なお、単純に配偶者が所有権(居住権を含む)を相続しても問題はありません。

◆配偶者の居住権の登記
 短期でない配偶者居住権は所有権の登記とは別に登記する必要があります。相続人に対しては所有権移転(名義変更)の相続登記を行い、配偶者に対しては居住権の設定登記を行います。後に存続期間の満了等により設定した居住権の抹消登記をします。最終的には相続人に対する所有権(名義)の登記が残る形になります。

相続人の個別事情による問題と対応

◆相続人が未成年者のとき(成年後見人と成年被後見人が共同相続人である時)

 親子が共に相続人である時、親子は互いに利害関係人になる為、親は子を代理できません。この場合は、親以外の代理人(特別代理人)を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。

 成年後見人と成年後見人が共に相続人である時も同様で、特別代理人の選任が必要になります。

  特別代理人はこちら

◆相続人の意思能力が不十分のとき

 意思能力が不十分で遺産分割協議の意思表示できない時、代理人として成年後見人等を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。

  成年後見人等はこちら

◆相続人が行方不明のとき

 行方不明(住民票上の住所に居ない音信不通)の時、代理人として不在者財産管理人を裁判所に選任してもらう必要があります。

  不在者財産管理人はこちら

◆相続人が相続放棄したとき

 家庭裁判所の手続によって相続放棄した相続人がいる時、相続放棄の証明書を遺産分割協議に提出する必要があります。

  相続放棄の証明書はこちら

◆相続人が外国に居住(日本に住所がない)しているとき

 居住している外国にある日本国大使館または領事館において発行する在留証明書やサイン証明書などを取得して、相続手続に対応する必要があります。

  在外邦人(日本人)の手続はこちら

相続に関する税金

◆相続税

 遺産(相続財産)が一定基準(基礎控除額)を超える場合に発生します。

  相続税についてはこちら

◆登録免許税

 不動産の名義変更(相続登記)の際に発生します。

  登録免許税についてはこちら

その他、相続登記に関する当事務所の対応

◆連絡を取り難い相続人との通信事務の代行
 遺産分割協議書への署名押印(印鑑証明書付き)の手配は、原則として代表相続人(依頼者)に行って頂きますが、依頼があれば当事務所において通信事務を代行できます。

 通信事務の内容は、書類等(押印すべき書類と意向を伝える手紙)の授受だけです。遺産分割協議の内容に関する交渉はできません。
遠方の不動産の相続登記(全国対応)
 相続登記の対象不動産は全国どこでも、オンライン申請により対応できます。また物理的な距離によって手数料が変わることはありません。
◆他の登記(住宅ローンの解除、売買・贈与など)との一括処理

 住宅ローンの解除(抵当権抹消登記)や売買・贈与などを行う前提として相続登記が必要な時、当事務所では一括で受付けて登記対応することが可能です。関係各所と書類授受などの対応も可能です。事務負担と費用負担の節約になります。
相続した不動産の売却
 相続した不動産の売却についても相談や事務に対応しています。相続登記と合わせてご利用ください。

  詳しくはこちら

定額手数料の相続登記(自宅限定)

  次の利用条件を満たす場合、相続人調査(戸籍謄本等の取寄せ(実費込み))・遺産分割協議書等の作成・相続登記(不動産の名義変更)までの相続登記手続を定額の手数料で利用できます。
利用条件に該当しない場合、料金表(手数料一覧)により対応することになります。計算例は下記(費用(手数料)補足)に記載してあります。

 また利用条件に該当するが、遺産分割協議書や戸籍謄本等一式を依頼者にて準備した場合、料金表(手数料一覧)による対応になりますが定額手数料より節約できます。

◆利用条件
 1.登記名義人(被相続人)の相続人は、配偶者と子、又は子だけ であること。

 2.遺言書がなく、相続人間で遺産分割(承継者)の合意があり、協力が得られること。
 3.相続登記(名義変更)の対象が自宅(居宅・敷地)であること。
 4.被相続人と相続人が日本国内に住所を有すること。
 5.相続人が未成年、意思能力不足、行方不明など、特段の事情がないこと。

◆費用
 費用総額=77,000(手数料・実費)+税金(登録免許税・消費税)+登記事項証明書1通600円

◆手続内容
 1.相続人調査(戸籍謄本等の取寄せ(実費含む))。
 2.遺産分割協議書ほか必要な書類すべての作成。 
 3.相続登記(不動産の名義変更)の申請手続。

◆依頼者側で準備・手配すべきもの
 1.依頼者の認印。
 2.遺産分割協議書への相続人全員の押印(実印)、および印鑑証明書の手配 ※依頼後。
 3.固定資産税の課税明細書または評価額証明書 ※なくても当事務所で手配可能。

◆完了後にお渡しするもの
 1.新しい権利証(登記識別情報通知)と登記完了証。
 2.登記完了を証明できる登記事項証明書。
 3.相続関係書類一式(相続関係を証する戸籍謄本等一式・遺産分割協議書)。

◆一言コメント
 定額手数料(戸籍謄本等の実費も含む)で費用が明瞭です。

 完了後にお渡しする相続関係を証する戸籍謄本等一式は、他の相続手続(預貯金等の相続)にも利用できます。よって各種の相続手続の最初に相続登記を依頼すると、別途取得する手間やコストが省けます。

◆費用の計算例

 ・自宅(土地・建物×各1筆、名義人は被相続人のみ、評価額1,000万円)。

 ・遺言書はなく、相続人は配偶者と子2人で配偶者が単独で相続する。

 ・相続人調査の手数料20,000円、実費5,000円と仮定する。

事務内容 手数料 実費 登録免許税 備 考
相続登記 77,000円  40,000円 1,000万円×0.4%(税率)
相続人調査  
相続関係図作成  
遺産分割協議書作成  
事前の登記事項調査  
交通費・郵送費  
筆数加算  
登記事項証明書 0円 1,200円 不動産×2筆、実費のみ
小計 77,000円 1,200円  40,000円  

                      費用総額=118,200円(消費税は除く)

事務内容と費用(手数料)の補足

◆事務内容(補足)
 1.相続登記に必要な書類の手配および作成、手続のほか関連する事務を行います。

 2.既に遺産分割協議を済ませている場合の相続登記だけの依頼も可能です。

 3.自分で行う登記申請の支援事務にも対応しています。

    本人による登記申請はこちら

 4.遺産分割の話合いに、立会い(事実確認)と手続等の説明以外の関与はできません。

 5.相談・見積り・依頼はこちらから

◆費用(補足)

 1.手数料一覧(料金表)はこちら

 2.戸籍謄本等や遺産分割協議書(押印済)の持込があれば、手数料を減額いたします。

 3.定額手数料の相続登記(自宅限定)に手数料一覧(料金表)は適用されません。

 4.費用の計算例(料金表で計算した場合)

   ・別宅(土地・建物×各1筆、名義人は被相続人のみ、評価額1,000万円)。

   ・遺言書はなく、相続人は配偶者と子2人で、遺産分割協議により配偶者が単独で相続する。

   ・相続人調査の手数料20,000円、実費5,000円と仮定する。

事務内容 手数料 実費 登録免許税 備 考
相続登記 40,000円 0円  40,000円 1,000万円×0.4%(税率)
相続人調査 20,000円 5,000円  
相続関係図作成 3,000円 0円  
遺産分割協議書作成 8,000円 0円 不動産だけの内容
事前の登記事項調査 200円 800円 不動産×2筆
交通費・郵送費 3,000円 3,000円 基本定額
筆数加算 2,000円 0円 不動産×2筆
登記事項証明書 600円 1,200円 不動産×2筆
小計 76,800円 10,000円  40,000円  

                        費用総額=126,800円(消費税は除く)

同じ条件下での定額手数料との比較

料金体系 総 額 手数料・実費 登録免許税 登記事項証明書
定額手数料 118,200円 77,000円  40,000円 1,200円
通常料金 126,800円 85,600円 40,000円 1,200円





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