不動産の売買と登記(不動産の名義変更)/司法書士の役割
不動産を買った時または売った時は、登記所(法務局)に対して売買の登記(不動産の名義変更)申請が必要になります。一般的な売買取引では契約等の事務は不動産(仲介)業者が担いますが、取引の最終段階での売買契約や代金決済などの確認、不動産の名義変更(売買の登記)は司法書士が担っています。
不動産の売買は、取引金額が大きく重要な権利移動なので、予定した日に確実に登記処理する必要があり、専門職である司法書士が利用されます。
◆売買登記における司法書士の役割
1.売買の状況に応じた登記申請の内容と件数などの判断。
2.登記対象の不動産の権利関係、当事者などの調査・確認。
3.当事者・仲介業者・金融機関などの関係者と、必要に応じた打合せ・書類授受など調整事務。
4.登記申請に必要な書類の作成と取得、および当事者が準備する書類等の連絡。
5.代金決済の立会い、登記書類や当事者などの確認(立会い事務)。
6.登記所(法務局)への登記申請(登録免許税の納付)、登記完了までの申請管理。
7.登記完了書類の代理受領および関係当事者への書類送付。
◆自宅購入と住宅ローンの登記の関係
不動産購入に際して住宅ローンを利用する場合、不動産の名義変更(売買登記)と住宅ローンの担保設定(抵当権設定登記)の各登記が必要になります。住宅ローンの登記(抵当権設定)は、もし住宅ローンが返済不能になった時に登記した不動産を売却して貸付金を回収するための担保です。抵当権設定登記は、金融機関を権利者として不動産の名義変更(売買登記)と同時に登記します。住宅ローン(貸付金)で代金決済する為、同時に購入不動産を担保にする必要があるからです。
なお、住宅ローンを返済し終えた時は、金融機関から担保の解除書類を受領して抵当権抹消登記を行います。
売買(自宅購入)と登記 手続の流れ
1.仲介業者などを利用して購入物件・資金計画の検討。
↓
2.購入物件の確定 ⇒ 住宅ローンで購入 ⇒ 金融機関に住宅ローン申込・審査 ⇒ 不可なら再検討
↓ ↓
自己資金で購入 住宅ローンの融資確定で3へ
↓
3.売買契約の締結、手付金の支払。
↓
4.登記手続の相談・依頼。
↓
5.仲介業者・金融機関と登記に関する調整、登記書類の作成。 ★当事務所が調整・作成。
↓
6.代金決済(代金支払、住宅ローン融資実行)・登記書類等の確認。 ★当事務所が立会い。
↓
7.登記申請(不動産の名義変更、住宅ローン担保設定)。 ★当事務所が代理申請。
↓
8.登記完了。権利証(登記識別情報通知)ほか一式のお渡し。
↓
9.不動産取得税の納付、住宅ローン控除のため確定申告。※依頼者にて納付・申告。
自宅購入における登記のパターン
代表的な登記パターンは以下のとおりですが、購入方法により異なるパターンもあります。
◆宅地と建物を一括で購入する場合(中古を含む)のパターン
1.所有権移転(土地建物の名義)+抵当権設定(住宅ローン)
2.所有権移転(土地名義)+所有権保存(建物名義)+抵当権設定(住宅ローン)
◆住宅用地を購入後、家を新築する場合のパターン
土地購入時:所有権移転(土地売買)+抵当権設定(住宅ローン)
新築後@:建物の表題登記(新築建物の所在・家屋番号・床面積などの登記)
新築後A:所有権保存(建物名義人登記)+抵当権設定(住宅ローン追加担保)+住所変更(転居)
任意売却とは/売却と登記 手続の流れ
◆任意売却とは
住宅ローンの途中で、返済が困難となったとき、または事情により自宅の処分が必要になったときに、金融機関の担保権実行(裁判所の強制競売)によらず、任意(一般的な売買取引)で不動産を売却し、その代金で住宅ローンを返済して清算することを任意売却と言います。この場合、売却と担保権(抵当権等)抹消の各登記を行うことになります。強制競売と比べて売却代金が高くなる可能性があり、裁判所を介さずに売却できるので実務ではよく利用されます。事前に住宅ローン先の金融機関との調整が必要です。住宅ローン残債務が売却代金を超える場合は、住宅ローンを清算し切れず借金が残って赤字になります。
なお、市区町村の税金滞納等による差押えの場合も同様です。
◆売却の流れ
1.仲介業者などを利用して売却の検討。
↓
2.売却代金など条件確定 ⇒ 住宅ローン等がある ⇒ 返済等について金融機関等と調整
↓ ↓
住宅ローン等がない 了解を得たら3へ
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3.売買契約の締結。
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4.登記手続の相談・依頼。
↓
5.仲介業者・金融機関と登記に関する調整、登記書類の作成。 ★当事務所が調整・作成。
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6.代金決済(代金受領、住宅ローン返済等)・登記書類等の確認。 ★当事務所が立会い。
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7.登記申請(不動産の名義変更、住宅ローン担保抹消)。 ★当事務所が代理申請。
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8.売却益があった場合、税務署に申告(譲渡所得税)。※税理士または依頼者にて申告。
仲介業者を入れない売買取引/相続対策としての親子間売買と他の方法との比較
◆仲介業者を入れない当事者だけで行う売買取引
不動産(仲介)業者が関与せず、当事者だけで直接取引を行うことがあります。知人間・親族間・隣人間で行われることが多く、主な理由は費用の節約です。しかし不動産(仲介)業者が関与しない場合、調査不足等でトラブルになる可能性があります。よって物件状況や相手方を十分に理解し、トラブルのリスク等も受け入れる前提での利用になります。
◆相続対策としての親子間売買と他の方法との比較
老後の資金などを得る目的で自宅など不動産を子に売却する。その子が将来、不動産を相続する予定であれば生前の財産承継にもなります。また親が必要とする資金額に応じた共有持分を売却するなど柔軟な対応もできます。
また財産承継を主な目的とするならば、他の方法(負担付贈与・遺言など)も考えられます。
売買に関する税金と減税
◆税金の種類
1.登録免許税…登記申請の時に負担する税金(登記申請時に納付)
2.不動産取得税…不動産を取得したときに負担する税金(登記後に納付)
3.固定資産税(都市計画税など)…不動産の所有に対して負担する税金(毎年納付)
4.譲渡所得税…不動産の売却による譲渡益に対して売主が負担する税金(所得税の確定申告)
※相続した居宅が空き家の場合など、特別控除の制度があります。
5.所得税(住宅ローン控除)…所得税の住宅ローン控除を受ける為に確定申告が必要です。
◆減税について
自宅購入(買う)の場合は、一定の条件(一般的な住宅なら ほぼ該当します)を満たせば各種の減税を受けることができます。減税を受ける為に住宅用家屋証明書が必要になりますが、登記申請の際に当事務所で取得します。
→ 登録免許税の軽減についてはこちら[国税庁HP(中段(3))]
→ 新築家屋の不動産取得税の軽減についてはこちら [愛知県HP]
→ 新築家屋の固定資産税の軽減についてはこちら [名古屋市HP]
→ 所得税の住宅ローン控除についてはこちら [国税庁HP]
売却の前提として売主が行うべき登記
売却の登記を行う前提として売主は次の登記を完了している必要があります。
◆相続登記
売主が登記名義人の相続人である時、相続登記が未了の状態で売買をすると、遺産分割紛争などの理由で相続登記ができず売買契約の履行が不能になる恐れがあるので、事前に相続登記を完了しておく必要があります。相続登記の完了は売買契約等の条件にもなります。
→ 相続登記はこちら
◆住所・氏名の変更(更正)登記
売主(登記名義人)の登記記録上の住所氏名が、現在の住所氏名と同一でないと、登記書類(住民票や印鑑証明書)と登記記録で同一人であることの確認ができず登記申請ができない為、事前(または同時)に住所・氏名の変更(更正)登記を行う必要があります。
◆住宅ローン(抵当権)などの抹消登記
売主(登記名義人)は、売買契約において買主に対し、所有権を妨げる権利を抹消する義務を負います。よって売買登記の事前(または同時)に住宅ローンの抵当権など所有権を妨げる権利の抹消登記を行う必要があります。なお住宅ローン継続中の売却(任意売却)は売買登記と同時に行います。
その他、売買の手続に関すること
◆不動産売却の相談
→ 詳しくはこちら
◆代表的な登記の添付書類
買主…住民票の写し、印鑑証明書(住宅ローンの登記に使用します)。
売主…権利証(登記識別情報通知)、印鑑証明書、固定資産税の評価証明書。
最低でも以上は必要です。状況に応じて他の書類が必要になる場合もあります。
定額手数料の売買登記(自宅購入・住宅ローン限定)
利用条件を満たす場合、金融機関や業者との登記に関する打合せ・売買代金決済時の立会い・登記書類の作成・売買登記(不動産の名義変更)の登記に関する事務を、定額の手数料で利用できます。買主からの利用を想定していますが、買主の承諾があれば売主からでも利用できます。また当事者の承諾があれば仲介業者など第三者の紹介による利用も可能です。
利用条件外または特段の事情がある場合、料金表(手数料一覧)または追加費用で対応することになります(下記参照)。
◆利用条件
1.新築または中古の戸建て(又はマンション)の購入、又は住宅用地の購入であること。
2.仲介業者または建売業者が関与する購入であること。
3.買主と売主の本人全員が代金決済に出席し、かつ問題なく意思表示できること。
4.金融機関が取扱う住宅ローンを利用すること。
5.その他、特段の事情がないこと。
◆費用(買主)
総額=85,000円(手数料・実費)+税金(登録免許税・消費税)+登記事項証明書1通600円
※減税証明書(住宅用家屋証明書)を利用する場合、4,300円(手数料+実費)追加。
※抵当権設定登記 2件目以降は1件につき5,000円追加。件数は住宅ローンの組み方によります。
※新築建物の表題登記(建物を新築した時)が必要な場合、費用は別途必要です。
◆手続内容
1.金融機関や不動産(仲介)業者と、登記に関する打合せ等の調整事務。
2.登記に要する書類の作成。
3.売買代金決済・登記書類引渡しの立会い(決済する金融機関への出張)。
4.売買の登記申請(所有権移転/保存、抵当権設定の各登記) 。
5.減税証明書(住宅用家屋証明書)の取得。※利用する場合のみ。
6.登記完了書類の送達事務(当事者および金融機関など)。
◆相談の際に準備すべきもの
1.売買契約書コピー。※契約前であれば不要。
2.固定資産税等の評価証明書または課税明細書のコピー。
※登録免許税の計算に必要ですが、手元にない場合は概算で計算します。
3.登記事項証明書コピー ※事前確認用。
4.借入金額または予定借入額(抵当権設定の債権額) ※登録免許税の計算に必要。
◆登記完了後にお渡しするもの
1.新しい権利証(登記識別情報通知)と登記完了証。
2.登記事項証明書 ※登記完了後の証明書。
3.売渡証書(登記原因証明情報)ほか書類一式。
◆一言コメント
減税の適用には条件がありますので、詳細を確認した上で見積書に反映させます。
◆費用の計算例
買主の費用:土地(評価額1,000万円)を購入(借入額1,000万円)する場合。
事務内容 | 手数料 | 実費 | 登録免許税 | 備 考 |
売買の登記 | 85,000円 | 150,000円 | 1,000万円×1.5%(軽減税率) | |
抵当権設定登記 | 40,000円 | 1,000万円×0.4%(税率) | ||
立会い | ― | 代金決済・書類・本人の各確認 | ||
事前の登記事項調査 | ― | |||
交通費・郵送費 | ― | |||
筆数加算 | ― | |||
借入額加算 | ― | |||
登記事項証明書 | ― | 600円 | ― | 不動産×1筆、実費のみ |
小計 | 85,000円 | 600円 | 190,000円 |
費用総額=275,600円(消費税は除く)
事務内容と費用(手数料)の補足
◆事務内容の補足
1.売買登記に必要な書類の作成および手配、手続ほか関連する事務を行います。
2.定額手数料を適用する場合は、手数料一覧(料金表)は適用されません。
3.税金(登録免許税を除く)に関する手続は、依頼者にて行って頂くことになります。
◆費用(手数料)の補足
2.費用の計算例(料金表で計算した場合)
買主の費用:土地(評価額1,000万円)を購入(借入金なし)する場合。
事務内容 | 手数料 | 実費 | 登録免許税 | 備 考 |
売買の登記 | 40,000円 | 0円 | 150,000円 | 1,000万円×1.5%(軽減税率) |
立会い | 10,000円 | 0円 | ― | 代金決済・書類・本人の各確認 |
事前の登記事項調査 | 100円 | 400円 | ― | 不動産×1筆 |
交通費・郵送費 | 3,000円 | 3,000円 | ― | 基本定額 |
筆数加算 | 1,000円 | 0円 | ― | 不動産×1筆 |
登記事項証明書 | 300円 | 600円 | ― | 不動産×1筆 |
小計 | 54,400円 | 4,000円 | 150,000円 |
費用総額=208,400円(消費税は除く)
売主の費用:土地(評価額1,000万円)を売却する場合。
事務内容 | 手数料 | 実費 | 登録免許税 | 備 考 |
売渡証書の作成 | 8,000円 | 0円 | ― | 登記原因証明情報の作成 |
小計 | 8,000円 | 0円 | ― |
費用総額=8,000円(消費税は除く)
※売主の住所氏名が登記事項と一致しない場合、追加で変更登記とその費用が必要です。
※売主が設定した(根)抵当権を抹消する場合、追加で抹消登記とその費用が必要です。