会社・法人の登記とは
会社・法人の登記手続は、会社・法人の設立、登記事項の変更(商号・本店・事業目的・取締役などの役員・資本金(増資など)・株式に関すること等)、解散・清算結了、M&A(組織変更・株式移転などによる親会社設立・合併など)、等の場合に必要です。
◆会社・法人の登記とは
会社・法人の登記とは、個人(自然人)ではなく、会社・法人の名義(法人格)で活動を行うにあたり、法人格を特定する商号(名称)・本店(所在地)・事業目的・代表者などを公示する制度です。会社・法人の登記は法律(会社法)で義務付けられており、設立の登記が会社(法人格)成立の要件となっています。
会社・法人の登記をすると、登記事項証明書が発行できるようになります。この登記事項証明書は、誰でも取得して代表者などの登記内容を確認することができます。また会社の印鑑を法務局に登録することで、会社の実印として機能し印鑑証明書も発行できるようになります。
◆会社・法人の登記事項
株式会社を例に挙げると登記事項は、商号(名称)・本店(所在地)・目的(事業内容)・公告方法・資本金の額・株式の数など株式に関する事項・役員(取締役・代表取締役など)に関する事項など、会社を特定する為の情報で構成されています。
◆個人事業主
会社の登記をしていない事業主は、個人事業主として個人名義で事業活動を行っていますが、多くは屋号(○○商店や○○屋など)を利用しています。なお、会社という名称は、登記された会社しか使用できません。
会社の種類と特徴
◆株式会社
業務執行権(取締役)と、それ以外の権限(株主)が分離しており、株主総会の決議で取締役を選ぶ構造で、原則として株主=取締役でないことが前提の会社形態です。多数の株主が出資参加することを想定している為ですが、同一人が株主と取締役を兼ねる一人会社も可能で、実際に多く存在します。取締役には任期があり定期的に改選が必要です。資本金があり、会社の負債につき株主は出資金の限度までの有限責任です。業務執行以外の重要事項は株主総会の決議(株式数に応じた議決権)で決定します。
◆(特例)有限会社
有限会社法は廃止されましたが、廃止前から存在する有限会社は、特例有限会社として存続しています。なお新規の設立はできません。取締役の任期がない等の特徴を残し、その他は株式会社と似た構造です。
◆合同会社(持分会社)
業務執行権と、それ以外の権限が分離していない出資社員だけで構成する持分会社という形態です。限られた社員だけでの事業を想定しています。なお社員の中から業務執行社員や代表社員を選ぶことは可能です。資本金があり、会社の負債につき社員は出資金の限度までの有限責任です。重要事項は原則として総社員の同意で決定します。
◆合名/合資会社(持分会社)
合名会社は、資本金がなく、会社の負債につき社員全員が無限責任を負うことが合同会社と違います。合資会社は、合名会社に有限責任(金銭出資だけ)の出資者(社員)を認めた会社形態です。
◆各会社の比較
種類 | 資本金 | 出資者責任 | 基本構成員 | 役員の任期 | 重要事項の決定 |
株式 | あり | 有限 | 株主と取締役 | 10年内で設定 | 株主総会決議 |
合同 | あり | 有限 | 社員 | なし | 総社員同意 |
合名 | なし | 無限 | 社員 | なし | 総社員同意 |
合資 | なし | 有限と無限 | 社員 | なし | 総社員同意 |
会社・法人の登記義務/違反による過料制裁
◆会社の登記義務と懈怠による過料制裁
会社には、登記事項に変更があった時、2週間以内に登記申請を行う義務があります。これを怠る(失念も含む)と登記懈怠の過料(いわゆる罰金)制裁を受けることになります。制裁を受ける場合、裁判所から通知が来ます。また登記を怠っていると登記内容を誤認した取引相手などに損害を与えてしまう可能性もあります。
なお、最も多い登記懈怠は、任期切れした役員変更登記の放置(失念)です。
設立の登記/手続の流れ
会社を作る為に行う最初の登記です。この登記をしないと法律上の会社として認められません。手続に要する期間は、株式会社(発起設立かつ現金出資)の場合、印鑑や定款等の準備や手配の状況、定款認証の為の公証役場の予約状況、法務局の混雑状況などによりますが、準備から登記完了まで2週間ほどです。合同会社の場合は、定款認証不要である為、1週間ほどです。
◆会社の設立登記する場面
1.会社として事業を始める時。
2.個人事業主から法人に移行(法人成り)する時。
3.資本関係がある会社(親会社や子会社)を作る時。
◆会社を設立するメリット
1.対外的な信用とイメージの向上(登記により会社情報が公示される)。
2.会社名義で事業活動ができる(個人資産と会社財産の分離)。
3.会社の負債に対する責任は、出資額(会社財産)が限度になる。
4.税金や社会保険の適用が変更される。※メリットとデメリットがある。
◆会社種類別の登記費用の比較
会社の種類 | 手数料 | 定款認証費 | 登録免許税 |
株式会社 | 同じ | 5万円ほど(電子定款の場合) | 15万円 |
合同会社 | 0円(認証不要) | 6万円 | |
合名/合資会社 | 要相談 | 0円(認証不要) | 6万円 |
※当事務所では定額手数料の設立登記を用意してます(下記参照)。
◆手続の流れ
★株式会社の発起設立(現金出資・電子定款)のケース
◆会社の設立と関係各所の届出
会社の設立(登記)後、各種届出書に登記事項証明書と定款を添えて、税務署・県税事務所・市税事務所(市役所)・労働基準監督署・ハローワーク・年金事務所・会社口座の金融機関など、必要に応じて提出します。
設立登記の手数料/費用の計算例 【株式・合同で現金出資 (定額)】
当事務所では、次の利用条件を満たす場合、会社の設立登記、定款等の作成・認証ほか手続、交通費などを含む手続の一切を、追加の手数料が発生しない定額の料金で利用できます。利用条件を満たさない場合、例えば現物出資する、他の種類の会社・法人を設立する等は、別途ご相談ください。
◆利用条件
1.設立する会社が株式会社または合同会社であること。
2.電子定款を選択すること。 ※電子定款は当事務所にて作成。
3.少数の出資者(発起人)だけで設立すること。
4.金銭出資のみ、かつ資本金1000万円以下であること。
5.事業目的が事前の許認可を要するもので無いこと。
6.本店所在地が愛知県内であること。
◆定額手数料
司法書士の手数料・報酬(実費込)=50,000円 ※消費税を除く。
◆定額手数料に含まれない費用(実費・税金)
1.登録免許税。
2.公証役場の定款認証の手数料 3万〜4.5万円。※株式会社の場合だけ必要。
3.電子定款を格納する為のUSB等メモリー1個1,000円。
4.会社の登記事項証明書 1通600円。※取得は任意です。
5.会社の印鑑証明書 1通450円。※取得は任意です。
◆事前に準備すべきもの
1.会社の実印(法務局に登録する為の印鑑)。
2.出資者(発起人)および設立時役員の印鑑証明書、各1通。
3.資本金を入金する為の代表発起人名義の金融機関口座(通帳)。
◆完了後にお渡しするもの
1.会社の登記事項証明書と印鑑証明書×各1通 ※依頼があった場合のみ。
2.電子定款(USBメモリー)×1個
3.定款謄本(公証人の印がある書面定款)×1通 ※合同会社は定款コピー。
4.印鑑カード×1枚 ※会社の印鑑証明書を取得する為の磁気カード。
5.設立登記に使用した書類(資本金の払込証明書など)一式
◆費用の計算例(株式会社の場合)
・株式会社(資本金500万円・現金出資)の設立する。
・会社の印鑑証明書の取得を合わせて依頼した。
事務内容 | 手数料 | 実費 | 登録免許税 | 備 考 |
株式会社の設立登記 | 50,000円 | 150,000円 | ||
定款ほか書類作成 | ― | |||
印鑑カード発行手続 | ― | 印鑑証明書発行に要するカード。 | ||
交通費・郵送費 | ― | |||
電子定款認証手続 | ― | 52,000円 | ― | 公証役場での認証手数料。 |
登記事項証明書 | ― | 600円 | ― | |
USB等メモリー | ― | 1,000円 | ― | 電子定款を格納する為。 |
会社の印鑑証明書 | ― | 450円 | ― | 依頼は任意です。 |
小計 | 50,000円 | 54,050円 | 150,000円 |
手数料50,000円+実費54,050円+登録免許税15万円=254,050円※消費税除く。
◆同じ条件で合同会社との比較
会社の種類 | 費用総額(消費税抜き) | 手数料・実費 | 登録免許税 |
株式会社 | 254,050円 | 104,050円 | 150,000円 |
合同会社 | 112,050円 | 52,050円 | 60,000円 |
登記事項の変更/手続の流れ 【株式会社の場合】
登記事項の変更には、原則として株主総会の決議が必要であり、他にも変更内容に応じて取締役(会)の決定(決議)などが必要です。また、これらの決議や決定などを証する書類(議事録など)も必要になります。
◆商号の変更
会社の名称です。商号の選定は自由ですが、他と類似する商号は不正競争防止法などにより紛争リスクがありますので お勧めしません。商号に使用できる文字は、ひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字その他の符号(制限あり)です。名称の前後に株式会社や合同会社など会社種類の表記を必ず付けます。会社種類の表記も商号の一部だからです。
◆事業目的の変更
事業目的は会社の権利義務の範囲を示すものです。この範囲内で事業活動することになりますので事業内容が目的として登記されている必要があります。事業目的における具体性・明確性は厳格なものではありませんが、ある程度は必要です。
◆本店の移転
本店とは会社の所在地で、移転することを本店移転と言います。会社の登記記録を管理する法務局には地域ごとに管轄があります。本店が法務局の管轄を越えて移転する場合、移転元の管轄法務局と移転先の管轄法務局の両方に対して同時(経由)に申請を行う必要があります。
◆役員(取締役など)変更と、機関の設置/廃止
取締役や監査役などの役員に、就任・再任(重任)・任期満了・辞任・死亡などがあった時、または登記された氏名や住所に変更があった時には変更登記を要します。役員の選任・解任には株主総会決議が必要です。役員には任期があり、同じ役員が継続する場合でも株主総会を開催して改めて再任(重任)決議をし、その旨の登記手続を要します。失念すると違反で過料(罰金)になるので任期管理はしっかり行う必要があります。
取締役会や監査役など、取締役以外の機関の設置は任意ですが、定款の定めにより設置/廃止の登記が必要になる場合があります。
以下、小規模の会社における設計例
役員・機関の組合せ | 定款規定(株式の譲渡制限) | 備 考 | |||
なし | あり | ||||
取締役 | 取締役会 | 監査役 | 設計可能 | 設計可能 | 取締役会は取締役3名以上必要 |
取締役 | 取締役会 | ― | ― | 設計可能※ | ※会計参与を設置すれば可能 |
取締役 | ― | 監査役 | ― | 設計可能 | |
取締役 | ― | ― | ― | 設計可能 | 最も多いパターン |
◆資本金の増加(増資)など
資本金は会社規模の目安となるものです。資金調達の為に新株発行をした場合、資本金が増加するので、増資(資本金と発行株式の増加)登記が必要になります。また準備金や剰余金を組入れて資本金が増加する場合も同様です。
資本金の額を減少させる減資の場合も登記手続が必要です。
◆株式に関すること
株式には、その数に応じて株主総会での議決権や配当を受ける権利があります。株式は、増資によって資本金と共に発行済株式の数を増やすことができます。また資本金に関係なく株式を併合/分割/消却して、既存の発行済株式数を増減させて1株あたりの評価額を調整することもできます。
種類株式の発行により、会社の経営状況に応じて株式の権利を内容を分類化することができます。例えば普通株式(議決権あり)の一部を議決権制限株式(議決権なし)に変更することにより、会社オーナーの支配権を維持したまま株式を分散させること等が可能になります。この方法は会社の安定経営や事業承継に利用されたりします。
株式の種類 | 内 容 |
配当優先付の株式 | 剰余金の配当を優先的に受けられる株式 |
議決権制限付の株式 | 株主総会の議決権事項を制限できる株式 |
譲渡制限付の株式 | 株式の譲渡につき会社の承認を要する株式、大多数の会社が採用 |
取得請求権付の株式 | 会社に対して取得するよう請求できる株式 |
取得条項付の株式 | 一定の事由の発生で、株主から会社が強制取得できる株式 |
拒否権条項付の株式 | 株主総会等決議に拒否権を発動できる株式(いわゆる黄金株) |
◆上記以外の登記事項について
株券発行の定め、支店など、上記で挙げた事項以外の変更にも対応しています。
◆手続の流れ
登記すべき事項に変更が生じた時(例えば株主総会で商号変更の決議をした日)から2週間以内に登記申請する必要があります。
登記事項の変更登記の手数料/費用の計算例 【料金表による計算】
◆費用の計算例(手数料一覧(料金表))
・株式会社(資本金1000万円)の役員変更(取締役の1名増員)を行う場合。
事務内容 | 手数料 | 実費 | 登録免許税 | 備 考 |
役員の変更登記 | 15,000円 | 0円 | 10,000円 | 資本金1億円以下の場合 |
議事録等作成 | 8,000円 | 0円 | ― | 書類作成は登記手数料に含む |
交通費・郵送費 | 3,000円 | 3,000円 | ― | |
事前の登記記録調査 | 100円 | 400円 | ― | 会社×1件 |
登記事項証明書 | 300円 | 600円 | ― | 会社×1件 |
小計 | 26,400円 | 4,000円 | 10,000円 |
手数料・実費 30,400円 + 登録免許税 10,000円=40,400円 ※消費税を除く。
会社の解散・清算(自主廃業)/会社種類の変更等/持株会社化
◆解散・清算結了 (自主廃業)の登記
会社を廃業して閉じる(休眠ではなく消滅させる)時に行う登記です。会社の解散登記と清算結了登記の2回行います。解散は事業活動を停止したことを公示する登記で、清算結了は会社財産の清算が完了して登記記録を閉鎖する登記です。清算とは解散後に会社に残った財産(売掛金や買掛金、設備など)の精算や処分、分配などを行うことです。また会社の解散により清算事務を行う為の清算人を選任する必要があります。
解散の登記により、解散した旨が登記記録に記載されますが、この時点では会社の登記記録は閉鎖されず、会社は清算事務を行う目的で存続しています。清算結了の登記によって登記記録が閉鎖されて会社が消滅します。なお閉鎖した登記記録は残ります。
◆会社種類の変更(組織変更)/組織再編(合併・会社分割)
会社は、経営状況に応じて会社法の手続を経ることで、次のとおり会社の種類を変更することができます。名称だけでなく組織構造も異なる別の会社に変更することになります。
1.株式会社 ⇒ 持分会社(合同・合名・合資)
2.持分会社(合同・合名・合資) ⇒ 株式会社
3.特例有限会社 ⇒ 株式会社
また、合併や会社分割により、他の会社と合併したり、1つの会社を分割することで、事業の整理が可能になります。
◆持株会社化
会社法に規定する株式移転や株式交換を利用することで、会社の株式を100%移転(又は交換)させて完全親会社・完全子会社を作ることができます。
株式会社以外の会社・法人の登記について
合同会社・合名会社・合資会社・特例有限会社の登記事項も、商号や本店などの基本的な登記事項は株式会社と同じですが、社員や出資に関することなど特有の登記事項があります。また登記に要する会社法の手続や必要書類は株式会社と異なります。
会社ではない各種法人(社団法人など)の登記は、法人の種類により個別に根拠法があり、これに基づいた登記事項や手続、必要書類があります。
登記手続の流れは、上記の設立や登記事項の変更と概ね同じです。
当事務所では、これら会社・法人の登記手続も対応していますので、ご相談ください。