離婚(財産分与)と不動産の登記(名義変更)
離婚の際に夫婦財産の清算を行うことを財産分与といいます。夫婦財産である自宅不動産を財産分与する場合、登記所(法務局)に対して登記(不動産の名義変更)の申請を行う必要があります。離婚により、配偶者の住所氏名に変更(旧姓復帰など)がある場合、住宅ローンの返済、借換え等がある場合は、これらの登記対応も必要になります。
◆不動産の財産分与の例
1.共有名義の場合 ⇒ どちらか一方の名義にする。
2.単独名義の場合 ⇒ 他方の名義にする。
3.売却する場合 ⇒ 代金を二人で分ける。
◆離婚(財産分与)に関連する名義変更以外の登記対応
1.住宅ローンの返済または借換えを行う場合 ⇒ 抵当権の抹消/設定の登記。
※住宅ローンを現状維持(そのまま返済継続)する場合 ⇒ 抵当権の登記そのまま。
2.氏名や住所の変更がある場合 ⇒ 所有権登記名義人の住所氏名の変更登記。
◆財産分与のタイミングについて
離婚後2年の間は財産分与ができますが、登記ほか各種手続において相手方の協力(署名押印など)が必要になります。離婚後に協力を得るのは困難な場合が多い為、離婚届の提出前に準備を済ませておくと登記ほか各種手続が円滑に進みます。ただし家庭裁判所の離婚調停を利用する場合は、調停成立後になります。
離婚/財産分与の登記 手続流れ
1.離婚意思の形成、夫婦間での話合い。
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2.協議(財産分与、親権、養育費、慰謝料など) ⇒ 合意できない。
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合意した。 家庭裁判所の調停 ⇒ 調停不成立なら裁判
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3.司法書士に相談、登記依頼。 ← ← ← 調停成立、3へ
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4.登記に関する書類作成。 ★当事務所が作成。
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5.書類に署名押印。※調停調書が利用できる時は、財産分与を受ける側のみ。
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6.協議離婚の場合、離婚届を提出(離婚成立)。※既に提出している場合を除く。
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7.登記の申請(不動産の名義変更)。 ★当事務所が代理申請。
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8.登記完了。権利証(登記識別情報通知)など書類のお渡し。
離婚の手続と文書
◆協議離婚
当事者間の協議と離婚届の提出だけです。協議において財産分与などの内容を合意します。養育費の支払いなど離婚後も継続する取決めを行うときは、支払い側の不履行に備えて公証役場で合意内容を公正証書にすることを強く勧めます。自宅の名義変更や清算金の一括払いだけのときは、協議書を作成しない場合もあります。
なお財産分与は離婚後2年を経過するまで可能ですが、離婚と同時に行うことをお勧めします。理由は上記の「財産分与のタイミングについて」を参照ください。
◆調停離婚
当事者間で協議が整わない場合、家庭裁判所に調停の申立を行い、調停委員を交えて話し合って合意します。合意が成立すれば、調停調書という文書が家庭裁判所で作成されます。登記内容が記載された調停調書を利用すれば相手方の協力がなくても登記などの手続ができます。
◆裁判離婚
2の調停が不成立の場合、離婚訴訟を経て成立します。判決書が作成されます。調停調書と同様、登記などの手続に利用できます。
離婚届の前に協議すべきこと
離婚届の提出前に、主に次のことを協議して合意し、書類等の準備しておきます。
1.財産分与…居住不動産・預貯金など夫婦財産の清算の定め
2.子供に関すること…親権・養育費支払・面会などの定め
3.その他…慰謝料や清算金などの定め
養育費の支払いなど離婚後も継続する取決めをする場合、公正証書を作成することを強く勧めます。不動産や金銭を一度に清算するなら公正証書の必要性は低いと思います。
別居の場合
事情により離婚届を提出できず別居となる場合があります。別居では離婚による財産分与はできませんが、夫婦財産の実質的な清算を要することがあります。この清算において、贈与を利用して譲渡する、または売買を利用して買い取る等の方法が考えられますが、離婚による財産分与ではないので贈与税や売買に関する税金は発生します。
離婚(財産分与)に関する税金
登記(不動産の名義変更)には登録免許税が発生し、通常は譲渡を受ける側が負担します。自宅を渡した側には譲渡所得税が発生する場合があります(自宅購入時の価格が離婚(財産分与)時の評価額を上回る場合)。自宅の譲渡を受けた側に贈与税は発生しませんが、財産分与を利用した過大な贈与と見なされた場合、贈与税の対象になります。不動産取得税も原則として発生しません。
→ 離婚の財産分与として不動産の譲渡を受けた場合の税金[国税庁HP]
→ 離婚の財産分与として不動産を渡した場合の税金[国税庁HP]
事務内容と費用(手数料)の補足
◆事務内容の補足
1.離婚登記に必要な書類の手配および作成、手続のほか関連する事務を行います。
2.離婚登記と、登記名義人の住所氏名の変更および住宅ローンの各登記を一括対応できます。
3.離婚協議(財産分与)の交渉などの関与はできません。立会いは可能です。
4.協議の合意後に協議書作成または公正証書作成支援はできます。
5.税金(登録免許税を除く)については、税制度の紹介程度の対応になります。
◆費用(手数料)の補足
2.調停証書が登記手続に利用できる内容であれば手数料を節約できます。
3.費用の計算例(料金表で計算した場合)
居宅(評価額1,000万円)の所有権一部(持分2分の1)を相手方に財産分与した場合。
事務内容 | 手数料 | 実費 | 登録免許税 | 備 考 |
財産分与の登記 | 40,000円 | 0円 | 100,000円 | 1,000万円×2分の1×2%(税率) |
財産分与証書の作成 | 8,000円 | 0円 | ― | |
事前の登記事項調査 | 100円 | 400円 | ― | 不動産×1筆 |
交通費・郵送費 | 3,000円 | 3,000円 | ― | 基本定額 |
筆数加算 | 1,000円 | 0円 | ― | 不動産×1筆 |
登記事項証明書 | 300円 | 600円 | ― | 不動産×1筆 |
小計 | 52,400円 | 4,000円 | 100,000円 |
費用総額=156,400円(消費税を除く)